LA在住、手作りが大好きなテルコ Sunnyゴルノーさんにインタビューをしました。 好きなことを通じて生きた英語力を身につけた、というテルコさん。これって自然な英語を身につける理想の形ではないでしょうか。
テルコさんはLAの日本人向け無料情報誌「ライトハウス」に14年半にわたって「なんでも手作りライフ」というコラムを執筆。 私がテルコさんを知ったのも、そのコラムでした。コラムに記載されていたブログを読み、自宅をモザイクで彩っていることを知って感動。メールのやりとりを経て、実際にモザイクの家を見せてもらったときの感動と興奮は今も忘れられません。
1970年生まれ。2003年よりLA在住。夫と娘の3人ぐらし。モザイクの家づくりがライフワーク。趣味はお菓子づくり、編み物、ソーイングに水泳。
今回の記事は、テルコさんに語っていただく形にしています。
手作りについて
子供の頃から手先が器用なほうで、ミシンを使って袋物を縫ったり、フエルトで人形を作ったり、基本的な編み物も本を見て独学で学びました。お菓子作りは高校生の頃に夢中になり始めて、大学生の頃はお菓子教室にも通いました。
そのころ 都内のケーキ屋さんを食べ歩いていて、そのイラストと感想を書いたノートを就職の面接の時に見せたのがきっかけで、レストランチェーンの会社でお菓子の商品開発の仕事をするようになりました。
アイルランドの旅
独身の頃26歳の時にアイルランドへ行きました。仕事を辞めて、2週間の一人旅。その頃、Bed and Breakfast と Irish Breakfast に興味があったので。まず北アイルランドに行き、その後アイルランドをぐるりとバスで回りました。
沢木耕太郎さんの「深夜特急」に影響されて、宿も決めずにバス旅行したけど、英語がとにかくわからずにすごく寂しい思いをしたんです。
今考えると、アイリッシュなまりを英語初心者の私がわかるわけもなかったんですけど。それで東京に戻ったら英語を勉強しようと思ったことがきっかけで夫と出会ったので、アイルランドへ行かなければ今の私はなかったでしょう。
新婚旅行は世界一周旅行(1年8ヶ月、601日53カ国)
夫が旅行大好きな人で100カ国以上旅行してるんですけど、彼の考え方は「仕事を引退してから楽しむより、若い時にいろんな経験をしたほうがいい」というもの。それで新婚旅行でお金がなくなるまで行き当たりばったりで旅行することにしました。
その頃(1999年)は携帯電話もラップトップもないので、インターネットカフェに行くとか郵便物は局留めで受け取るとか、カメラもあまり使わなかったので、忘れないように絵日記を書いていました。
この日記帳は、東京にいた頃に「モロッコ皮の本」(とちおりくみこ)というブックデザイナーがベルギーで製本を学んだ旅行記に影響されて製本教室を習いに行っていた時に自分で作った、中が白い本です。
それが旅行が思いがけず長引いてページが足りなくなったので、スウェーデンで似たようなものを買い足しました。濡れたり汚れたりしないようにジップロックバッグに入れて、大事に持ち歩いていました。ジェルペンと色鉛筆を使いました。
旅行中は手作りが出来なかったけど、旅先で影響を受けたものを絵日記に書くことで、アウトプットが出来ていました。この本は私の宝物です。
絵日記ギャラリー
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LAに移り住んだいきさつ
新婚時代は東京に住んでいて、夫が法律事務所に勤めていた時に、エンターテイメントの法律の分野が面白そうだと思ったそうです。夫も一生日本に住むというつもりはなくて、いつかアメリカに戻りたいと思っていたし、私も移住するなら若いうちの方が馴染めるんじゃないかと思いました。
それで、エンターテイメントの法律の仕事ならやっぱりハリウッド!ということで、仕事もないままサンタモニカに引っ越しました。知人もいないし、留学もしたことないし、ペーパードライバーという状況だったけど、今振り返ると不安よりも希望のほうが強くて、若かったなって思います。
英会話が上達したのはアイスクリーム屋での仕事
LAに引っ越してきてすぐにESLに行ったけど、テキストで勉強するのはつまらないし会話上達の即効性がないと思ってすぐに辞めました。
それで仕事をすれば少しは会話が上手になるかなと思って探したけど、英語もろくに話せない、引っ越してきたばかりの人を雇ってくれる所がなかったんです。やっとアイスクリームショップのBen and Jerry’sで雇ってくれたんです。私はそこで一生分のアイスクリームを食べました。
アイスクリームケーキを作って名前を絞り出すのがのがうまかったので、重宝されました。高校生と働くのもなんか新鮮だったし、電話でケーキの注文を受けるのにも慣れたので、やってよかったです。
家をモザイクにしようと思ったきっかけ
この家を買った時、最初は外壁を塗り直して、床のカーペットを剥がせばすぐ住めるはずだったのだけど、窓のシロアリの被害を見つけてしまい、完璧主義者の夫が一からやり直すと言い出しました。「骨組みがしっかりしていない家はいくら表面だけつくろってもダメだ」という考えなので。
モザイクをしようと思った最初のきっかけは、サンタモニカに住んでいた頃にモザイクの家を偶然見つけて衝撃を受けたこと。その後にベニスビーチにあるモザイクの家を見つけて、両方のスタイルの違い(ロマンチック系とアート系)で同じモザイクでも作る人によってこれだけ雰囲気が違うんだと思い、私もやってみたくなりました。
あとはコンプトンにあるワッツタワーを見たことです。サイモン・ロディアという男性が30年以上かけてひとりで作り上げたと知って、とても感激しました。
あとはやっぱりバルセロナのグエルパークにも影響を受けました。
グエルパークの見どころをまとめた動画はこちら。
幸い陶芸で作った皿はたくさんあったし、もともとメキシコの手描きタイルが大好きだったので、ロザリトまで買い出しに行きました。見よう見まねに壁の一部をやってみたら面白くなって、どんどん他の部分にもモザイクをし始め、結局10年くらいかかってしまいました。
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テルコさんが20年続けたブログ
2003年から2023年まで、テルコさんが20年続けたブログが Sunny’s Laboratory 。モザイクだけでなく、旅行、お菓子作り、編み物など、ふだんの生活が記録されています。
情報誌「ライトハウス」のコラムを始めたきっかけ
私の前に長く子育てコラム担当の女性がいらしたんですけど、お子さんが大きくなって子育てを卒業されてコラムが終了になったんです。それで次の人を探している時に、編集部の男性の奥様が偶然私のブログの読者で、ご主人に私を推薦して下さって、編集長からお話をいただきました。それで最初は子育てについて書いていたんですが、少しずつ手作りの話に移っていきました。
*コラムのバックナンバーリンクは記事の最下部にあります。
毎日の習慣
もう20年くらいほぼ毎朝泳いでいます。50分、1200メートルくらいフリースタイル(クロール)で泳ぎ、その後のサウナを楽しみにしています。
私は宗教の信仰はないんですけど、よく冗談で「私は水泳教を信じてる」って言うんです。風邪をひきにくいし、肩こりを防げるし、悩みも水に流せるし、いくつになっても続けられるし、全身運動だし、私にはとても合っています。
朝の散歩。パンデミックがきっかけで始めて、川沿いをDuolingoをやりながら歩いています。
英語をどう学んできたか
英語はテキストで学ぶのでなく、好きなことを通じて深めていく。日本語で学ぶより英語だと情報量が多いから深く広く学べます。好奇心を枯らさないようにするのが大切だと思いますね。
ふとしたことで何かに興味を持ったら、とことん調べて練習して上手くなりたいと思います。頭の中がそのことでいっぱいになり、できるようになった時の達成感がたまらなくて、その趣味が定着して長く続くこともあるし、飽きてやらなくなることもあるけど、それでいい。
こちらに来た時に比べて自然と聞き取りは出来るようになってるから、子供の学校のこと、病院、スモールトークなど普段の会話では特に不便は感じません。
今は90%くらいの英語力で暮らしていて、あとの10%はわからないままだけど、そのわからない部分は今までの経験でカバー出来るようになったと思います。
これからも英語が100%わかるようになることはないと思います。でも、ゴールを低くして、どんどん恥ずかしい目にあっているうちに、自然と上達していくものだと思います。
この言葉、本当に共感します!人生経験とそれまでつちかった知恵でなんとかなるものです。
コミュニケーションで大切にしていること
スラングやカースワードを使わない。日本語でも流行り言葉や悪い言葉を使わないようにしているから、英語でも同じようにしています。
人の話をよく聴いてから自分が話す。アメリカ人は自分のことを話すのが好きな人が多い。そこで共感できることや共通点を探しながら、会話の糸口を見つける。
ゴルノー家のモットー “Why not?”
「We Bought a Zoo」(邦題:幸せへのキセキ)という映画は、マット・デイモンが演じる主人公が廃墟と化した動物園を買って建て直すストーリーなんですが、映画の中で動物園の飼育係のスカーレット・ヨハンソンが”Why did you buy this place?”と聞いた答えがこれ。
“Why not?”
買わない理由はないだろう(なおこ意訳)
日本語ではうまく言い表せない言葉だけど、とても好きで、壁にモザイクしたほど。我が家のモットーになりました。
この映画「幸せへのキセキ」の最後に、感動的な “Why not?” がでてくるので、それもお見逃しなく!
この映画はもうひとつ素敵なシーンがあって、マット・デイモンが悩んでいる息子にいいます。
All you need is 20 seconds of insane courage
必要なのは20秒の勇気だ
20秒だけ勇気を出して、ってところが「私にも出来る」って思わせてくれて、いつも迷っている時にこの言葉を思い出します。
この気持ち、私もめちゃくちゃわかります!だって、テルコさんに「家を見せてもらえないか?」と頼むメールを書いているとき「やっぱり図々しすぎるよね、こんなこと頼む人いないよね」としばらくウジウジしてましたから(笑)。
でも勇気を振りしぼってメールを出したらOKがもらえた!そして今に至っているわけですから、とんでもない勇気が功を奏することがある、という実例になるのではないでしょうか?
好きな映画とテレビ番組
ラブコメディが好きで、中でも何度みても飽きないのが「ブリジット・ジョーンズの日記」(Bridget Jones’s Diary)の3部作。2025年の春に新作「Mad About The Boy」が公開されるのが楽しみ。ヒューグラントのファンです。
主人公の名前を娘につけた
「ラブソングができるまで」(原題:Music and Lyrics、ドリュー・バリモア、ヒュー・グラント共演)は、80年代にヒットしたバンドのスターが売れなくなって過去の栄光にすがって生きているけど、ポップスターに新曲を書いてカムバックする話。
妊娠中に映画館に見に行って、女の子の名前を考えていた時にドリューの役がソフィー・フィッシャーという名前で、気に入って娘に同じ名前をつけました。
ハマっているTVドラマ
「ギルモア・ガールズ」(Gilmore Girls)はもう20年以上前のドラマだけど、カルト的人気があって、その理由が知りたくて今さら見始めました。7シーズンあるうちのまだ3シーズン目ですが毎日のように見ています。
てるこさんからのメッセージ
手作りでも英語でも何でもそうなんですけど、興味を持ってやりたいと思ったら、後回しにせず失敗を恐れずに、すぐやってみるといいと思います。出来ない理由を探してやりたいことを後回しにしているうちに、やりたいこともチャンスも逃げていってしまうから。
テルコさんの作品集(インスタグラム)・ブログ・コラム
ちょこっと裏話
2016年に初めてモザイクハウスを訪問したときの、映画「ラ・ラ・ランド」にまつわるエピソードを音声配信メディアVoicyで紹介しています!ご興味あればぜひ!