6回目でついに合格!——娘の運転練習につきあった4年間

6回目でやっと合格!長女の運転免許

異国での子育ては、日本では当たり前のことが当たり前でない場面に何度も立ち会うことでもあります。カリフォルニアでは運転練習に付き合うのは親の役目。補助ブレーキのない助手席で恐怖に耐えながら、娘の6回目の実地試験合格を待ち続けた話です。

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日本とカリフォルニアの免許取得プロセスの違い

日本では運転免許を取るとき、教習所に通えばプロの教官が丁寧に教えてくれますよね。親がすることといえば、費用を払うことくらいです。

でもカリフォルニアは違います。筆記試験に合格して仮免許を持つ子ども(18歳未満の場合は必ず)が路上で練習するには、家族や保護者が助手席に乗って練習に付きあう必要があります。教習車には補助ブレーキがついていますが、普通の車にはそんなものはありません。何かあろうと、助手席ではブレーキを踏む手段がないのです。

それが、すべての恐怖の源でした。

18歳の夏から始まった、長い道のり

長女が最初に実地試験を受けたのは、高校を卒業した18歳の夏のこと。3回チャレンジしましたが、いずれも不合格。大学に進んでからは運転する必要がないため、試験からはいったん離れました。

注:筆記試験に受かったあと、実地試験は3回まで受けることができます。3回落ちたら、また新たに筆記試験を受けて合格する必要があります。

そして21歳の夏、あらためて筆記試験を受けて合格し、運転練習を再開しましたが、2回とも不合格。もう後がない!という気持ちでした。

助手席の恐怖

練習に付き合う私は、いつも怖くてビクビクしていました。大きな道路ではなかったけど、カーブを曲がりそこねて中央分離帯の茂みに突っ込んだことがあります。2本ある左折車線で曲がり方を間違えて、隣の車にぶつけたこともあります。

何かあっても、私はブレーキを踏めない。その無力感と恐怖感が、ずっと心の底に張り付いていました。

そして過去5回、テストで不合格となり、泣きじゃくる長女をなぐさめるのが常でした。だから今回も、あまり期待しすぎず、ダメでもまた筆記試験を受けてやり直せばいい、と考えていたのです。

Poway DMV、駐車場で待った20分

2026年5月27日。長女はPoway DMVで6回目の実地試験に臨みました。書類受付の女性にも「This is the last chance!(これが最後のチャンスよ)」と言われ、さらに緊張!(注:3回落ちると、また改めて筆記試験を受けて合格しないと実地試験を受けられないため)

試験官が近づいてきて、私は助手席から降りました。手信号、ブレーキランプ、その他の機能の確認が終わると、試験官が助手席に乗りこみます。

私は車が見える場所でずっと見ていました。しかし、娘の車は待てど暮らせど駐車場を出発しません。娘より後の車のほうが先に出て行くほどです。私の胸には、暗澹たる気持ちが広がっていました。

きっと、また不合格だ。泣きじゃくる娘をどうやって慰めよう。また練習の日々が続くのかな——

ようやく駐車場を出ていった車を見ながら、そんなことを考えつつDMVのまわりをうろうろと歩きました。

そろそろ終わってもいい頃だと思ってソワソワしていたとき、電話が鳴りました。

「ママ、合格したよ!」

思わず、膝から崩れそうになりました。自分でも驚くほど、涙があふれて止まりませんでした。

伝わっていたかもしれない、私の不安

一夜明けた今、ふと思います。私の緊張や恐怖が、練習中の娘に伝わっていたのかもしれない、と。

長女が生まれたばかりの頃のことを思い出しました。初めての出産で、何もかもがわからなくて不安でいっぱいだった私。全然寝てくれなくてよく泣く赤ちゃんだったのも、私の緊張が伝わってたからかもしれません。

怖がりで、心配性で、いつも最悪のケースを考えてしまう——それが私という人間なのだと、改めてよくわかりました。

運転練習の地獄から解放されて

今は、本当にホッとしています。

こんな経験は、サンディエゴにいなければ味わわなかったでしょう。異国で子育てをするということは、日本では当たり前のことが当たり前でない場面に、何度も立ち会うということです。

それでも、娘は合格しました。長い道のりを経て、自分の力でたどり着きました。それだけで十分すぎるほどだと、涙とともに思い知らされた一日でした。

あの映画を思い出した

合格の興奮が少し落ち着いたころ、ふと一本の映画が頭に浮かびました。2015年のアメリカ映画、Learning to Drive(邦題:「しあわせへのまわり道」)です。2ヶ月前に観たばかりでした。

舞台はニューヨーク。21年連れ添った夫に突然離婚を切り出された女性、ウェンディ(パトリシア・クラークソン)が主人公です。ニューヨーク暮らしでずっと運転を夫に頼りきっていた彼女は、一人で生きていくために、いまさら免許を取らなければならなくなります。そこに現れるのが、シーク教徒の移民でタクシー運転手兼教官のダーワン(ベン・キングスレー)。ふたりは車の中で、お互いの孤独を少しずつ打ち明けていきます。

小粒な映画ですが、なかなかよかったです。ハンドルを握ることが、自分の人生を自分でコントロールすることの比喩になっていて、じんわりと胸に響きました。

ちょっとトリビア

ちなみに、ダーワンと結婚することになるインドからの花嫁を演じていたのが、サリタ・チョードリー。『AND JUST LIKE THAT… / セックス・アンド・ザ・シティ新章』でキャリー・ブラッドショーの親友、やり手の不動産エージェント、シーマを演じている女優です。あの自信満々のシーマが、英語もろくに話せずおどおどしている花嫁を演じているのを見て、思わず笑ってしまいました。同じ女優とはとても思えないギャップでした。

最後に

娘の運転練習につきあった4年間を振り返ると、私もウェンディと似たようなものだったかもしれません。助手席でブレーキも踏めず、ただ怖がっているだけ。

でもそれでも、長女の隣に座り続けることだけはできました。娘はそこから、自分でハンドルを握る力を身につけました。それで十分だったのだと、今は思います。

Thank you for reading!

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